
いま私たちが考えるべきこと (新潮文庫) 橋本治
「私」が含まれる「私たち」がいま考えるべきこと。
思考を促す文章が時に難解だが、それも大事。
「孤独」とか「孤立」と考えてしまうのは、「正しい答は、自分や自分たちではなく、外にある"大きな一体感を示して存在するなにか"が提示してくれるものだ」と考えていた、前近代の名残である。(p252)
「孤独」とか「孤立」と考えてしまうのは、「正しい答は、自分や自分たちではなく、外にある"大きな一体感を示して存在するなにか"が提示してくれるものだ」と考えていた、前近代の名残である。(p252)
男はよく、自分が母親の胎内から生まれたということを感慨深く語るが、自分が父親の射精から生まれたということに関しては、徹底的にそれを隠蔽する傾向があるように思われる。その背後には、やはり、射精にまつわる不感症の問題と、男の体が汚いという問題が潜んでいるのではないか。(p171)
肺ガンで入院し、二か月と経たぬうちに死んだが、あまり泣き言はいわなかった。さすがに気落ちはしていたが、おだやかだった。江戸っ子らしく、子どもの頃から好物だった神田のうなぎの蒲焼を口にした夜、眠るように逝った。
「死ぬなんてナ、だれにもできるこったよ」といいたかったのだろう。
わたしは父の死を見てから、父を尊敬するようになった。(p280)
「今を生きること」を犠牲にして、その分何かを貯め込んで将来うまいことをやってやろうといった卑しい「頭」の発想は、われわれの将来が未知であることの不安にうまくつけ込み、数々の金融商品や保険商品等を生み出しました。そういったものをすっかり否定するつもりはありませんが、しかし「今を生きること」をないがしろにしてまで将来に備えるのは、本末転倒以外の何物でもありませn。(p184)
自由とは、「生き方の幅」と、とらえ直してもいいかもしれない。人間、幅がある方が自由に決まっている。(p48)
する寄る子犬を抱きかかえよ(p61)
本当にろくでもない時代が訪れたものだ。こんな時代には、いくらか斜に構えて、いい加減に生きるぐらいしか、僕らには有効な手立てはないように思う。そんなふうに思ったことが、本書を著すきっかけだった。(p177)
或は自由は不自由の際に生ずと云ふも可なり。263 福沢諭吉『文明論之概略』182 (p128)
暮らしのおへそ Vol.10―習慣から考える生き方、暮らし方 (私のカントリー別冊)
その人だけがもつ習慣、その人の根っこをつくるもの。それを、この本では「暮らしのおへそ」と呼びたいと思います。(表紙裏)
必要なものはすべて自分のなかにある。
外へ求めることをやめたら
幸せを受け止める感度がアップした。(p070)
<本文>が読み手の内部に生成され、そこに<原文>の影が働くところにこそ、筆者の期待する文学の力を見たい。(p54)
“希望”の心理学―時間的展望をどうもつか (講談社現代新書)
友人を大切にし、一緒にいることは、刹那主義や現在主義を肯定し、展望主義を否定することと関係した。つまり、対人関係場面では、未来志向ではなく、現在志向だったのである。
ひととともにいるときの時間は、何かを達成していくときに流れる時間とは違う流れ方をしていることがわかる。(p113)
普遍的な希望は、個を越えたところにあるのではなく、個のなかにあると考えなければならない。そうでないと、普遍は個の対立物となってしまう。必要なことは、個を越えることではなく、異質な個どうしがつながり、世界を共有していくことなのである。(p167)
書かれている事実に助けられながら、読者は書かれなかった余白の部分に何かを見てしまうのだ。芥川もあた『今昔物語』のこうした喚起力につきうごかされた一人であって、彼が『羅生門』でやったことは、各シークェンスの間にある空白の部分に彼なりのイメージを充填して行く作業にすぎなかったとも言えるだろう。(p185)
人生といえばすぐ、まっすぐな線のように思い浮かべるくせから離れる必要がある。人生のある時期までは無垢で、ある時期から汚れだすというのはうそである。ある時期までは幸福で、ある時期からは不幸になるというのもうそである。(p75)
窓を開けると向かいも窓。ヴェニスの窓は恋の窓である。若者は情熱を燃やし、乙女はそれに答える。
若者「さあ、こっちに来ておくれ、二人の愛を確かめよう」
乙女「でも、どうやってこの窓と窓の間を渡るの」
若者「心配しないで。この棒の上を歩いておいで」
乙女「それでは帰りが渡れないわ」(p158)
そうだったのか現代思想―ニーチェからフーコーまで (講談社プラスアルファ文庫)
これからの課題は──課題だけ言って終わるのも変なんですが──決断すらも不能になるような、自分の中のある種のインポテンツ性をどこまで見きわめるかというのとからんでくるんです。(p475)
「制服と銃器類お持ちしました」
「ねーねー部下ってことはぁー、オレの命令きいちゃうの?」
「はい。」
「じゃ、脱げ。」(p166)
悩みがあるときは、女に打ちあけよう。
悩みを分かちあうことは、
女にとって信頼と友情のしるし。(p19)
悩みを抱えた男は、
ひとりきりになって考えたい
──女が追いかけまわしても、冷たくあしらわれるだけ。(p22)
すぐ国境に達して、別の国に入るような生活が日常のヨーロッパの人々は、外出するとき、自分を証明する証明書をいつも身につけている。(p12)
いさぎよい答
なぜ書くか? という問いに、「死にたくないからだ」とシリトーは答えた。そのようないさぎよい答えを私は初めて聞いた。うれしかった(p197)
結局われわれは、自分の脳に入ることしか理解できない。
──けっきょく、共同体なきところに規範はない、と結論してもよさそうだな。
というよりもむしろ、大人と子供と言うべきだろう。成熟した者として共同体の内にいる大人と、未熟な者としてまだ共同体の外にいる子供。そして、外から内へと向かう境界線においてこそ、規範は生まれてくる。つまり、ときどき調子をはずすがおおむね大人の反応の仕方を身につけていく子供がいるから、その誤解をただして修正し教育する場面が生じ、そこで規範的な力が働くことになる。そうして、大人たちの一致団結した気紛れに子供たちは同調していかねばならず、どうしても同調できない場合には切り捨てられる。
実はみんなみんな心の中に悩みをかかえている
「なんでオレの悩み聞いてくれないんだよ!!」
他人のことにかまってられないのはあたりまえなのに・・・
すべて新しい文化は、低俗なものの中から起こる。
42男はことばより行動力。笑顔に惚れるな。背中に惚れろ。
44一流の男はむやみに女を抱かない。(オトコの選び方)
148恋人同士のときならある程度の束縛もいいけれど、結婚したらつまらない束縛はしないこと。(結婚生活のルール)
愛は売っていないのですか・・・?
どうやら、愛は非売品のようです。
もし、どこかで販売していたとしたら、それは何かの罠かと思われます。
くれぐれもご注意下さい。
私たちは、自己と他者、自分と他のものという二元的な考え方に深入りしていきます。元来、自分と対象物という見方をするところに執着が生まれ、欲の原因になります。自分のまわりにはいろいろな物があり、いろいろな人がいます。
(…)
このように宇宙の真実に目覚めた人は、物事に執着するということがなくなり、何事も淡々と受け容れることができるようになります。
7.わたしは一日100回は、自分に言い聞かせます。
わたしの精神的ならびに物質的生活は、他者の労働の上に成り立っているということを。
44.手段は完全になったというのに、肝心の目的がよくわからなくなったというのが、この時代の特徴と言えるでしょう。
周囲に同調しすぎて自分を見失いかけている
多くの学生、OL、サラリーマンたち。
同質社会・日本で、一人で生きられる能力をもつため、
孤独のすすめを説く。逆に、「人並み」から外れた
「不登校、引きこもり、パラサイト・シングル、生涯独身、
シングル・マザー、超OK」と著者はあえて擁護する。
時代を拓くカウンセラーが臨床経験などをもとに、
どうしたら一人になれるのか、こころの声を聞くスキル、
孤独を深めると、どのような人生が開けてくるのかを語る。
(カバー折り返しより)
私は、一切の雑多なことを忘れて、自分の心の奥へ奥へと、深く深く沈潜していく時間が一日の半分くらい確保できないと、次第にストレスが蓄積してきて、無性にイライラし始めてしまう性質(たち)なのです。(p12)0074『遠い太鼓』に描かれていたような、言葉の通じないヨーロッパの地で誰にも会わず、ただずっと走ることと翻訳と小説を書くことをし続けた村上春樹に憧れた。
孤独を癒すことのできる、ただ、一つの道。それは、孤独から抜け出すことではなく、より深く、より深く、その孤独を深めていくことだ。
「コンピュータが入ってるんだよ」
「あ・・・そうか」
「不思議」を納得させるもの
昔は「魔法」
今は「コンピュータ」
納得するとあとは考えなくなるブタは多い
言葉はいつまでも話し続けられなければならないし、ほかの人の言葉によって修正されなければならないし、ほかの人が語る言葉を参照しなければならないし、今まで言ったことを言い直して更新されなければならない。そうして言葉を紡ぎ続けていくというのが、多くの人の一生、人生だと思います。そして、言葉をすり抜けるものとして自分というものがあって、いつでもまだ語られていないもの、自分にも明らかになっていない自分というものがあって、語り続け、生き続け、行為し続けていくものなのです。(p171)一冊の新書の中でめまぐるしく「心」について考えていく。
はじめて二人だけの朝をむかえ、新郎が新婦に言った。
「ハニー、朝食の時間だけど何が欲しい?」
「あたしの好きなもの、知ってるでしょ」
「もちろん知ってるさ、だけどときには食事もしないと」(「1」p53)
「釣り合い」
普通の女に必要なものは、頭脳よりも容姿である。なぜなら、普通の男というものは、思考力よりも視覚の方が発達しているものだからだ。(「2」p167)
愛ってなんですか?
言葉で考えはじめたらもう愛じゃなくなるな
「情報がない、という情報」
あるものの価値を測るのに、いろんなものさしがあるということを知るのはとても大事なことです。そして、その時もっと大事なことは、どのものさしをあなたが選ぶかということなのです。(p22)