小説の書き方
井上 光晴
まず三冊のノートを準備して下さい。仮にそれをA、B、Cとしておきます。(p175)中学生の頃、市の図書館で借りてきて、この教えを実行した。
3冊の大学ノートを用意して、
Aには日誌的なこと
Bには思考
Cにはフィクション
を書くのだ。
そのうち、ノートはAのみ1冊だけ生き残り、ABCの区別なく、のべつまくなし大学ノートにいろいろを書きまくるようになった。
今のその頃書いた20冊の大学ノートは宝物。
この本に対する評価は低いが、それとこれとは別の話。
今改めて考えるに、自分のその日の行動(A)と思考(B)から飛翔してフィクション(C)を創作するというのは、自分の創作活動について振り返るに、重要な起点になっているのかもしれない。
自分の知っている世界のことをしか、作家は親身になって書けない、親身になって書いていないものを読んでも、よっぽどの才がなければつまらないだろうと思うし、世に出す自信も生まれない、他人の時間ばかり奪って申し訳なくなる。
だから、僕の創作の動機や原点は、あるいはこれら20冊の大学ノート、あるいは頭の中の過去にあるのではないか、と思ったりしているこの頃である。
創作行動とは、常に過去にしか存在しない?
となると、それは歴史と繋がるし、思索したワダチたる哲学なのか?