2008年02月04日

0267『東京・地震・たんぽぽ』

★★★★4

東京・地震・たんぽぽ

東京・地震・たんぽぽ

  • 作者: 豊島 ミホ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/08/24
  • メディア: 単行本




はじめての豊島ミホ氏の作品。
よかった。うまいなあと思うところが多かった。

「ボランティアに行きたい」
 十四歳のあたしの発言なんて、普通なら一蹴されて終りだと思う。でも、家族揃っての夕飯時、東京の惨状を映すテレビを見ながらあたしが言った時、父さんも母さんも、茶碗を持った手を宙に浮かせて、それまでしていたお喋りをやめた。(p.158『復讐の時間』)

本書の中の一編の冒頭4行だが、いいツカミだ。

あたしは数えきれない回数、「甘いもの」になって優基に吸われた。もちろん、一緒にケーキもいっぱい食べた。(p.196)

赤面してしまいそうな表現だが、きちんと収まっている。

瓦礫の下敷きになって生死の境をさまよう主婦、人々を元気づけようとするフリーター兼自称DJ。
「東京地震」の「その時」、人々はどうするのか。
そういう設定を通じて群像劇を描き出している。
連作で、それぞれちょっとずつつながっていて。

地震と言えば村上春樹氏の『神の子どもたちはみな踊る』で、あの話は直接的に地震を描いていないところがすごいところだ。
でも、正面から地震を描く事も、求められていることだろう。

古屋兎丸氏はマンガ『彼女を守る51の方法』で、本作と同じことを試みている。

豊島氏はもともとR18文学とかで出てきた方みたいで、エッセイ『底辺女子高生』も面白そうだ。
同年齢として、注目していきたい。

 +++

10.10.9追記

作家が25歳のときに、この本を書いたという。
僕が25歳のときに、この本の帯に「25歳の作家が恐れと祈りをこめて描いた」と書かれていたのもあって、購入して、読んだ。
作中にも、25歳の主婦、25階のアイドル、25万円の報酬など、25が散見される。
25はとてもキリがいい。
僕のもうひとつのブログも25pesoという。
25歳をひとつの節目と思って、いろいろやった。
今は、その後の25年を生きている。

 でも、じゅうたんにできてもう落ちることのない染みや、クリーニングに出せずくすんだままの白いカーテン、新婚時代に選んだフランフランのアシンメトリーなローテーブルにこびりついたクレヨンのらくがき、などを見るにつけて、わたしは大きなスプーンでもって自分が削り取られていくような錯覚を覚えた。(p46)

僕は昔、『擦り切れて丸くなるまで』という小説を書こうとしていた。
そういう時期もあったのだ。
 彼女は擦り減っていた。そして、その彼女に付きあうぶん、俺も擦り減った。俺たちは擦り減るために結婚したのだろうか。(p128)

豊島ミホ氏が休筆宣言をしたのは記憶に新しい。
作家もまた、すり減っていたのだろう。

文庫版が出ています。
ネット画像だけ見たら、ハードカバーの重厚な黒のほうがよかったかな。

東京・地震・たんぽぽ (集英社文庫)

東京・地震・たんぽぽ (集英社文庫)

  • 作者: 豊島 ミホ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/08/20
  • メディア: 文庫




 +++

11.4.11、11.3.11の震災の後の追記

「あたしーー伊藤はあたしたちを責めにきたのかと思った・・・ほら見ろ、バチが当たったって、言いにきたんだって」(p170)

4選を決めた東京都知事の失言ではないが、地震に限らず、起こった出来事について、バチが当たったのかも知れない、と思うことは多々ある。
それは、自分を越えたもの、神なるものを意識するための心の仕組みか。
posted by B&M at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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