
哲学の謎 (講談社現代新書)
野矢 茂樹
──けっきょく、共同体なきところに規範はない、と結論してもよさそうだな。
というよりもむしろ、大人と子供と言うべきだろう。成熟した者として共同体の内にいる大人と、未熟な者としてまだ共同体の外にいる子供。そして、外から内へと向かう境界線においてこそ、規範は生まれてくる。つまり、ときどき調子をはずすがおおむね大人の反応の仕方を身につけていく子供がいるから、その誤解をただして修正し教育する場面が生じ、そこで規範的な力が働くことになる。そうして、大人たちの一致団結した気紛れに子供たちは同調していかねばならず、どうしても同調できない場合には切り捨てられる。
ふたりの哲学問答。
哲学に関しては、わかりやすく、興味深い、ということがとても重要だと、頭の回転の悪い僕なんかは思うわけだが、そんな僕にうってつけの本だった。