2007年10月07日

0097『アムステルダム』

★★★★★5
アムステルダム 新潮クレストブックス
アムステルダム 新潮クレストブックス
イアン マキューアン

豊穰な小説世界を堪能させてくれる傑作。
いい意味で文学的。いい意味で読みづらい。濃厚。
読んでよかった。
一度読んでおけば、またあとでパラシュート的に気楽に開いて、そこだけ読んでも面白い。

特に、70ページ(単行本版)にある、クライヴが列車旅行に出るくだりは、当時の僕にとって感動モノの描写だった。
2度目にそこだけ読むと、味気なかったのは、たぶん、保坂和志氏がいうように、小説とは、(全体を)読んでいる、その瞬間にしかないものだからだろう。

小説の引用について、「一文引用」についてで考えたりもしたが、結局のところ、小説の楽しさを「感想」に置き換えることはできない。
さすればこのような読書ノートに書くべきは、小説を読んだ後の「なんとなし」の気分やなんかだろう。
もちろん、技術的なことなどをノートしてもいいが。
技術的なもの?
『アムステルダム』については、そういうものを超越していて、読むこと自体が快楽だったので、めっそうもない。
良質の文学というものには独特の重厚な音楽が鳴っていて、時々その調べに耳を澄ますのは、無駄なことではないと思う。

できれば、そういうものの書き手になりたいものである。

 しかし今となってみると目の前こそが現実のようだったーー何平方マイルという安っぽい現代住宅の主な役割はテレビアンテナや衛生のパラボラを支えることのようで、工場はテレビで宣伝される下らないがたくたを製造し、さびれた駐車場にはそれを届けるトラックが列をなし、ほかのあらゆる場所は道路と交通地獄。まるでどんちゃん騒ぎのディナー・パーティの翌朝だ。(P70-71単行本版)


文庫版(僕はこちらも買ってしまった):
アムステルダム
アムステルダム
イアン・マキューアン,小山 太一
posted by B&M at 08:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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