
孤独であるためのレッスン (NHKブックス)
諸富 祥彦
周囲に同調しすぎて自分を見失いかけている
多くの学生、OL、サラリーマンたち。
同質社会・日本で、一人で生きられる能力をもつため、
孤独のすすめを説く。逆に、「人並み」から外れた
「不登校、引きこもり、パラサイト・シングル、生涯独身、
シングル・マザー、超OK」と著者はあえて擁護する。
時代を拓くカウンセラーが臨床経験などをもとに、
どうしたら一人になれるのか、こころの声を聞くスキル、
孤独を深めると、どのような人生が開けてくるのかを語る。
(カバー折り返しより)
大学時代に見たことだったと思う。
東京だったかどこだったか忘れたが(当時僕は自転車で旅をしていたのでいろんな土地に赴いていたから)、小奇麗なカフェだったと思う。
OLだろうか、すらっとした容姿で男性には不自由しそうにない女性が、この本を読んでいた。
この頃本屋に『おひとりさまの老後』という本があって、買うのをためらって、買わなかった。
でも、そういう「生き方」自体に、僕はどこか無性に憧れているところがあるのだと思う。
私は、一切の雑多なことを忘れて、自分の心の奥へ奥へと、深く深く沈潜していく時間が一日の半分くらい確保できないと、次第にストレスが蓄積してきて、無性にイライラし始めてしまう性質(たち)なのです。(p12)0074『遠い太鼓』に描かれていたような、言葉の通じないヨーロッパの地で誰にも会わず、ただずっと走ることと翻訳と小説を書くことをし続けた村上春樹に憧れた。
僕もこの作者、諸富さんと同じく、ある程度自分自身の中に沈潜していかないとだめな性格なのだと思う。
「今の子どもたちに社会性を育成しなくてはいけない」。
しかし一方、それは「当の子どもたちにとっては、きわめて脅迫的」なことなのではないか。(p26)
「孤独」について有意義に考えさせてくれた、僕にとって大切な本のひとつです。
それは、この頃「つながり」(0078『ふたりだからできること』)やら「コミュニケーション」(0075『コミュニケーション力』)やらを考える一方、どうしても「ひとり」(ひとりカラオケの記録)みたいなことを考えたりしなければならない「魂が欲張りな人(『孤独であるためのレッスン』p253)」にとって、多様な視点を与えてくれる重要な書物だと感じます。
孤独を癒すことのできる、ただ、一つの道。それは、孤独から抜け出すことではなく、より深く、より深く、その孤独を深めていくことだ。