来たるべき作家たち
作家が何のコンピュータをよく使っているかとか──林檎マークをよく見かけた──、文学に対してどのような姿勢で取り組んでいるのかとか、書斎はどんな風だとか、そういう「いかに書かれたか」という情報は、同じように書いてみたいと思う僕のような人間にとってはものすごく楽しいことだ。
創作の現場、秘話、裏話みたいなもの。
この頃はDVDを買うと、必ずと言っていいほどメイキングだとかコメンタリー(監督等が映画の映像にあわせて解説してくれる)だとかがついてきて、こういう創作「途上」の話というようなものが一般的になってきた感がある。
僕が学生の頃はまだビデオが主流でそこにはメイキングなどの付加情報はなく、変わりに長ったらしいCMばかりが入っていたし、そもそもこういう「ハウツー」みたいなものは今ほどはあふれていなかったように思う。
そんな下世話な話はしまい、というような空気もあったのかもしれない。
60年代の本で0041『作家の秘密ー14人の作家とのインタビュー』というのがあるが、そこにはこう書いてある。
「作家にとって語るべき秘密は何もない。作品がすべてなのだから」
この本には地元市立図書館で出会い、借りては返し、返しては借りに行った覚えがある。
それで、3度目くらいのとき、これは手に入れておかねばならないだろうと思い立ち、父親のクレジットカードで騙されやしないかどきどきしながら、はじめてのネットショッピングというやつをやったのではなかっただろうか。
懐かしい思い出である。
今ではネットショッピングは日常の出来事になった。
これから二カ月、ハワイに行って小説を書く予定です。やっぱり隔絶された場所に行かないと集中できないし、日本にいて隔絶されるというのはほとんど困難だから。結局、『ノルウェイの森』以降、すべての長篇は海外で書いていることになりますね。
引用部は村上春樹氏のインタビューより。
ハワイで書く「小説」とは、おそらく『スプートニクの恋人』のことだと思われる。
※2008/01/14 リライト