
知識人99人の死に方 (角川文庫) 監修:荒俣宏
リアル文庫。
表紙は、昆虫標本に、死因、年齢、日付。
命あるもの、みな、いつかは死に至る。
それがいつで、どのような最期なのか。
この本には、「死の間際はきわめて忙しい」という、「近代以後の人間(p7)」の死について、百科事典のように列挙されている。
忙しいのは、葬式や読経に忙しいだけではない。やはりその人の一生が締めくくられる「見せ場(p10)」だからこそ忙しい。
モンテーニュが言った、「われわれが準備するのは死に対してではない。(…)われわれは死の準備に対して準備するのだ(p10)」という言葉が引用されている。
肺ガンで入院し、二か月と経たぬうちに死んだが、あまり泣き言はいわなかった。さすがに気落ちはしていたが、おだやかだった。江戸っ子らしく、子どもの頃から好物だった神田のうなぎの蒲焼を口にした夜、眠るように逝った。
「死ぬなんてナ、だれにもできるこったよ」といいたかったのだろう。
わたしは父の死を見てから、父を尊敬するようになった。(p280)