
女のいない男たち (文春文庫 む 5-14) - 村上春樹
学生の頃、村上春樹氏の文学と、ものすごく近かった。
ノルウェイ、ねじまき鳥、世界の終わり。自分の青春時代と、切っても切れない作品群。
それから社会へ出て、だんだんと疎遠になっていく。
「1Q84」「騎士団長」、どちらも読んでいない。その他以後発表の作品も、翻訳も、読んでいない。
そもそも、小説自体から疎遠になった。
読むのはもっと実用的なもの。
得る物語は、たまあにドラマや映画といった映像作品から。
そう、日常的に誰かの物語に入り込む、ということから疎遠になったのだ。
それがこの頃、続けて2つ、村上作品を読んだ。
短編集。
単行本として出たときは、敬遠した。
1作品目の「ドライブ・マイ・カー」で挫折した。
作品が取り上げた地域から、ちょっとした苦情があったことはニュースで知っていた。
それは作品を読むきっかけにはならなかった。
文庫本になった頃、タイトルがなんだか気になってきた。
女のいない?
結婚して連れ合いがおり、家族が厳然としてある状態において、女のいない状態を想像することは困難であり、小説を読むことは冒険であった。
それでふと、iPhoneのKindleアプリで検索してみた。
はじめの数ページが試し読みできた。
そして、そこから、ぐいぐいと引き込まれていった。
自然と足が書店へ向き、リアル書物を手に入れ、あとは一気に読んだ。
しかしどのような場合にあっても、知は無知に勝るというのが彼の基本的な考え方であり、生きる姿勢だった。たとえどんな激しい苦痛がもたらされるにせよ、おれはそれを知らなくてはならない。知ることによってのみ、人は強くなることができるのだから。(p37)