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学校を改革する――学びの共同体の構想と実践 (岩波ブックレット) - 佐藤学言語活動、アクティブ・ラーニング、協同学習。
魅力ある一個人である教師が、教壇の上で、1時間講義形式の授業を行う。
そういう授業スタイルから脱皮し、生徒自身が活動し、考え、学び合う授業へ。
30年前からそのような授業形態を模索してきた著者の思想の、わかりやすいブックレット。
ん?ブックレットってなんだ?
辞書には「小冊子」とあった。
じゃあ、文庫、新書、パンフレット、小冊子の違いはなんだ?
拙者にはわからぬが、とりあえず薄けりゃいいんじゃなかろうか。
俯瞰的な書物であり、その知や思想の入り口たりうるような、網羅的な、広角的な。
と、何か疑問に思ったようなことをつぶやくと、教えてほしいと思うと、それを教えてくれる友がいる。
そんな理想の共同体。
「教え合う関係」ではなく「学び合う関係」を推奨するのには、他にも理由がある。「教え合う関係」では、教師や仲間の援助を「待つ子ども」を育ててしまう。「待つ子ども」は、中学校、高校になると、ほとんど必然的に「恨む子ども」へと転じてゆく。(p30)
批判もある。
「生徒主体では行き着くべきところに行き着かない場合があるのではないか。」
探求、果てしない。オープンエンドで、結局言いたいことがわからない。
これは、「美しさ」の議論でもある。
本当の「美しさ」はあるのか。
「美しさ」とは、時代や評価媒体によって違わないか。
同じように、教えるべきこと、行き着くべきところはあるのか。
不易と、流行。
この、「不易」は、どの程度なのか。
道徳的価値。必修領域。必須到達度。
学習指導要領にのっとって、教えるべきことを詰め込めばいいのか?
学びの共同体とは、生徒の自律を育むと感じた。
生きる力を育む教育と感じた。
生徒自らの学ぶ力、聞く力、
お上からの何かを待つのではなく、自分たちで学んでいく。
あるいは関係を編み直す。
世界的な政治課題や環境課題などを解決していこうとするとき、学びの共同体に近い関係を作れる人間は、強い。
本書途中で民主主義、という言葉が出てくるが、人間個々の尊厳、そういうことにまで話がいきそうな。
ともかく、著者の思想の概要に触れ、熱気に触れ、新しい方向性について考えられた一冊。
学校内部の分裂のツケは必ず生徒のところにしわ寄せがいくし、改革に真摯に取り組む良心的な教師たちに深い心の傷を残してしまう。もし学校改革が校内に分裂を生み出すようであれば、決して改革に取り組んではならない。改革がもたらすデメリットの方が、改革によるメリットよりもはるかに大きい。(p22)