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おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス) [コミック] / 浅野 いにお (著); ...長くて、苦しい物語が終わった。
読者にいろいろと考えさせる点、このマンガはきっと傑作。
主人公がこんなんなんて、新しい試み。
挑戦と実験とその成果というてんで見ても、このマンガはきっと傑作。
そこらへんの掃いて捨てるようなマンガとは、一線を画する。
この年末年始に考えていたことのひとつに、「社会を支える歯車」がある。
社会を「回す」歯車ではなくて、社会を支える歯車。
オリジナル、端緒ではなくても、その動きが稼働していくのに必要な連動部分。
いろいろな「震え」を許容する、確固とした社会基盤を支える部分。
その昔、「社会の歯車にはなりたくないよ」みたいなことを言う人がいて。
僕も、あるいはそういうアウトサイダーのようなものにもあこがれていて。
でも、今は、バリバリ組織の一員であり、社会の一員であることを強要されている。
このマンガは、プンプンの成長譚であるから、どうしても、青春からオトナへの脱皮・脱却ということになる。
物語の枠組みとしては、初めのメガネ担任教師のシーンから、最後のシーンまで、ループする仕組みになっている。
子どもたちは、性、暴力、宗教といった危うい橋を渡りながら、オトナになっていく。
でも、僕らの視界には、物語が始まった当時の「異常な」オトナたちはいない。
もう、僕らの視界には、オトナたちが異形のものであったり、恐怖の対象であったりはしない。
オトナたちがゆがんでいたのは、プンプンがゆがんでいたから、あるいは未成熟だったためなのかもしれない。(あるいは我々オトナは純粋な子どもの目から見ると醜くゆがんでいるものだが、それが隠されたのかもしれない。)
話としては、初恋・喪失モノである。青春(モラトリアム)からの脱却。
0191『シガテラ』とか、『ノルウェイの森』(村上春樹)とかと同じものである。
息苦しい、青春のどんづまりに入っていって、やがてそこから抜け出していく、というような。
誰もが描くべき時代、とも言える。
上記の2作品は、青春のまっただ中で読んだので、サバイバル本として読んだ。
僕(このブログの筆者)はもう30代所帯持ちで、青春を懐古しながらも、だいぶんと「オトナ」な領域に踏み込んでいっている。
だから『プンプン』は、鎮魂歌のような形で読んだ。
この物語を、サバイバル本として読んでいる、青春バリバリ現役の人たちがいるかもしれない。
あるいはこれから青春のどんづまりに入っていく人たちの、予習本になっているかもしれない。(ちなみに、僕にとって「予習本」は、思い返してみるに、
0324『人間失格』だったんじゃないかな。)
そんなことと、ループする作品の構造がリンクする。
そんなふうに、高い場所から物事を見るようになったことも、僕が「オトナ」になった証拠かもしれない。
作者さんについて。
『情熱大陸』では、自分で家を買って、画廊で粛々と描かれている感じだったなあ。
自分の作品の、表紙をのけた中とか、予告編とかで遊ぶ、あるいはTwitterのつぶやきの奇異さなど、遊びゴコロあふれる人。
※ところで、『プンプン』の単行本の表紙の色と、
0744『おざなり君』の表紙の色との間に共通点があるかも、と思ったが、やっぱりなかったことを報告しておきます。
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