★★★3
「終末のフール」とか、「オーデュポンの祈り」とか、「モダンタイムス」とか、伊坂幸太郎氏は村上春樹氏の「システムのテーマ」を拡充している、というような評判もあり、気にはなっていたし手に入れたりしたものもあるのだけれど、どこか読み続かず、売ったりして。
今は「SOSの猿」を、これはいけそうかと読んでいる。
そんな人気作家・伊坂幸太郎氏のファン本。
引用や写真、インタビューやファンコメントなどで作られている。
しかも、数年前まで、本人がパソコンを持ち込んで現行を書いていたという場所でもあるとか。(p086)
ところで、こういう形のある種類の「知の図鑑」というか、「知の百科事典」というか、そういうものについて。
この頃ブルーレイディスク/ハードディスクドライブ・レコーダーを買ったのだけれど、その取り扱い説明書の分厚いこと!
この『伊坂幸太郎WORLD&LOVE!』の3倍くらいある。
それで、目次とか、索引とか、用語集とか、Q&Aとか、仕様とかがあって、ひとつの図鑑、事典みたいになっている。
それぞれの項目は、「レコーダー」という製品を使うために網羅され、少しずつ重なり合っている。
もちろん説明書なんて真面目に読む人間はほとんどいない。
必要となる機能の、必要となる手順だけを得るためにページはめくられる。
作家のファン本も、目次とか、作家プロフィールとか、クイズとかがあって、作品群をめぐってひとつの図鑑、事典みたいになっている。
それぞれの項目は、「伊坂幸太郎」という作家を中心に網羅されている。ビートルズ、仙台、システム。
ファン本の場合は、それを楽しんでヨム人間がたくさんいる。
作品と、それに関係する現実のリンクや、作家の隠れた意図やら、場所やら、作中で出てくる作品やら。
こういう、知識の再編集を、生きていく上でやりたいなあ、と思う。
論文のようなものである。
参考文献を束ねて、自分の論にする。
この本の最後のほうにも、「もっともっと深い、伊坂ワールドへダイブする!主要作品 参考・引用文献リスト」というのがあるけれど、作家の目を通じて再編集・再編成された世界という、論文、いや違う小説という作品。
ブログなんかを使ってちょっとだけそれと似たことを試みているけれど、なんだかただ知識を散らかしているだけみたいで、悲しい。
そうなんだ。
僕はいろんなことを散らかしているだけのような気もするんだ。
この読書ブログだってそう。
読み散らかして、ちょっとずつコメントやレートをつけて。
体系的な、一本の柱のような、そんなものが、見えてきているのかしらん?
一方、伊坂は情報化時代を舞台に、アーキテクチャ*に組み込まれた人間の悲劇を描いた。『ゴールデンスランバー』では、・・・
*「アーキテクチャ」=法学者ローレンス・レッシグが提唱する人の行動や社会秩序への規制の在り方。法や規範を押しつけて規制するのではなく、ネットワーク上などで、物理的にコントロールしてしまう発想。(p071)