新潮社
発売日:2008-08
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帯「河合隼雄氏が倒れられる直前に奇跡のように実現した、貴重な最後の対話。」
小川洋子氏が好きだ。
あの物静かな語り口、物語の森の中からやわらかく語りかけてくるような。
河合隼雄氏が好きだ。
がっはっはと豪快に笑うような、すべてをおおらかに受け入れてくれるような。
二人の対談本とあっては、読まずにはいられない。
興味深い話がたくさんあった。
比較的若く、二十代の半ばでデビューした私は、折々のインタビューの際、「なぜ小説を書くのですか」と質問されるのが苦痛でなりませんでした。直接そういう言葉で聞かれてなくても、自分の小説について語る必要に迫られた時、書くことの意味を明確にイメージできないでいる自分の未熟さがさらけ出されるようで、怖かったのです。
自分のために書いているのか。それは直感的に違う気がしていました。こんなちっぽけな自分の中にある何かを吐き出すためだけに書いているのだとしたら、きっとすぐの行き詰まるだろうという予感もありました。では他人のためなのか。そう言い切ってしまうと、所詮作家は読者に媚びているだけなのだと開き直っているようで、ますます本心から遠ざかってゆくばかりです。(p125-126「二人のルート 少し長すぎるあとがき」より)