2008年02月23日

0296『ネットカフェ難民―ドキュメント「最底辺生活」』

★★★★4
ネットカフェ難民―ドキュメント「最底辺生活」 (幻冬舎新書 (か-4-2))
ネットカフェ難民―ドキュメント「最底辺生活」 (幻冬舎新書 (か-4-2))
川崎 昌平

※この写真はオレンジがきつすぎる。実際は0055『2週間で小説を書く!』の時のように、黄色っぽい表紙である。幻冬舎新書は、新参の中でコンテンツが斬新で注目している。書店で見かけたポスターに「とりあえず1000冊」と謳っていたのもこのブログのコンセプトと共感する。この『ネカフェ難民』もそうだが、そう難しくはなく、読みやすいが、斬新な視点、というジャンルを目指しているみたい。ネット時代的かな。

今回は自室や布団の中ではなくて、実際のネットカフェの中や、ガストやマクドナルドでも読んだ。
読む場所って、けっこう影響しますね。
僕は今あんまり周りを気にしない時期みたいで、けっこう集中して本が読めた。
まあその傾向は、便所で飯を作ったり、ひどい格好で自転車をこいで高級でパートに入ったりできた大学時代から培われたものなのだろうけれど。
(読む場所についてだけど、左が壁になっている隅っこが集中できることに気づいた。ファミレスに3時間、マクドナルドに1時間、ネットカフェに2時間、こればかりを読んでいたわけでもないが、けっこう時間をかけて読み込んだ。食べながら読み込んだ。食べ物を飲み込んだ。文字とファーストフードをかきこんだ。)

おもしろかった。
何がおもしろかったかというと、まずこの人の年齢が僕とほぼ同じなのだ。
そして、考え方が文学的、哲学的、オタク的。共感するところ多し。
その上、文章がウマイ。用語の用い方も、僕のような者に適切。

幸福にも自分の立場が固まりつつあるこの頃、それでも根無し草よろしく気ままに思索してものを書いて暮らしたい、大学時代みたいな自由な気分を取り戻したい。という思いは僕の中にもある。
それを実践してくれた本。
読みながら、僕もしばし自由な気分。

ちくま新書の『ルポ 最底辺』と共に読んだ。
ただ、この『ネカフェ難民』のほうが読みやすく、後半部分は加速する(あるいは筆が荒れる)ので、先に読み終えてしまった。

この本の構成は『なんとなく、クリスタル』よろしく、はじめの17日間分のドキュメントには45もの注釈がついている。
これがなかなかどうして面白い。
そして、後半13日間、注釈は消え、文章も少々荒れたようになり、迷走の挙げ句、終わる。

世界の貧困は、おそらく日本で難民化するこういう人たちよりも深刻で、救いがない。
結局は裕福なわれわれの社会における難民は、かなり贅沢な難民と言わざるをえない。
この本を読みながら、僕は何を思えばよかったのか。
安易なことは言えないが、でも言うが(それがこのブログの存在意義)、構造的に貧困は解消できないとか、こういう生き方を選ばざるを得ない精神の自由とか、やっぱやる気は大切だけどやる気ってなあに、とか、ああ、月並みなことしか思い浮かばない。みんなが幸せになれればいいが、幸せになった人類は自然を破壊するし、やっぱりどこかうつなところを抱えつつ生きて行かなければならないのだろうけれど。

僕自身が転落する可能性、あるいは生徒達の近い未来、と思って読んだ。
いろいろと自分と密なところが多くて、ほんとうにおもしろく読ませてもらった。
星が4つなのは、しかし本としての構成や普遍性に難があるということからである。
気分的には、読了後星5つだった。

いろいろ批判できるところはある。
著者は物書きなので、そういうしたたかさもあったとは思う。
『ルポ 最底辺』に出てくるような人たちとはちょっと違うと思う。
そういう意味では、できる人間がちょっと退屈にかまけてやってみたお遊び放浪、みたいな指摘もできるだろう。
でも、実際にその生活の中に入って実行するということの尊さよ!
著者の川崎氏は、思索する25歳の代表だと思った。

途中の描写力も小説さながらで、引き込まれた。

この年で出会えてよかった、25歳本である。

中学生は高校受験のために勉強をし、高校生は大学受験のために勉強をすることが、何の疑問も持たれずにまかり通っている節があるからだ。「今、学ぶべきこと」がどこにもなく、「先のために」努力することが、勉強熱心と評価されたりする。(p101「*23就職活動」)
posted by B&M at 18:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会(・貧困・格差) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0295『英語を子どもに教えるな』

★★★★4
英語を子どもに教えるな (中公新書ラクレ)
英語を子どもに教えるな (中公新書ラクレ)
市川 力

 英語を単なるスキルとして教えることは弊害をともない。英語をぺらぺらとしゃべれるだけで、中身のあることは言えないくせに、英会話力というスキルを持つ優越感で人を見下した態度を身につけてしまうことがある。(p186)

小学校での英語の授業が5、6年生ではじめられた。
定期的に英語熱にうなされる日本国民と、英語の関係とは。
もちろんその英語熱のおかげで、狭き門となった教職の道に、奇跡的に足を踏み入れられたわけなのだが。

英語教育についてもっとも話題になった一冊だったと思う。
海外での教育経験などをもとに、早期教育の現場をルポタージュ、刺激的な提言を行った。
英語教員なら一度は読んでおく必要があると思う。

 それが、いつしか「もっとさせないと……」とエスカレートしていくのを止められないところに、早期教育の怖さの本質がある。現代の母親は、核家族化が進行したせいもあり、子育てについて助言をしてくれる人が身の回りにいない。そのうえ、どう子どもを育てたらよいかというイメージを描きにくい。どうしても自分の周囲の子どもと比較して、わが子の発達状況を判断することになる。他の子が、自分の子どものできていないことを身につけているのを見たら、うちの子だけ落ちこぼれてしまうのではと猛烈に不安になり、「もっとさせなければ」という気持ちから逃れられなくなってしまう。(p102)
posted by B&M at 18:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0294『教師の聞き方・話し方パワーアップ術』

★★★3
教師の聞き方・話し方パワーアップ術
高階 玲治,松永 昌幸

 しかし、「聞き方・話し方」は教育の基本である。教育作用とは、相手に働きかけることによって知的水準の向上をめざすことであるが、そのコミュニケーションの基本が「聞き方・話し方」である。(まえがき)

小学校勤務時代に通勤電車の中で読んだ本で、内容も小学校寄りだったのでおもしろく読んだ。でも中学生にも通じることだし、いろいろな指摘も的を得ていた。
教員をはじめて間もない頃に読んでいろいろなことを考えた、印象深い一冊。
 そして、忘れてはいけないのは、指名発言とか発表といった「公式」なルートに乗ったものだけでなく「公式」なルートから外れたつぶやきや表情や動きを子どもの本音として聞き取り、後押ししてあげることである。(p53)
posted by B&M at 18:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0293『象工場のハッピーエンド』

★★2
象工場のハッピーエンド (新潮文庫)
安西 水丸,村上 春樹

黄金コンビの初期イラストエッセイ。
巻末に、
村上:僕、割に多く注文つけちゃうんですよね。今回は字だけでやってほしいとか。
安西:注文つけられると、束縛された気分になってつらいっていう人がいるけど、村上さんの場合にはそんなことないみたい。最初にパッと言った後は、もうなんにも言わないから。その後は、相性が好いっていうのか、とても自由に描けるんだよね。
なんて対談もあったりして。

言われてみれば初期の村上作品は、長編は佐々木マキ氏、短編は安西水丸氏だったなあ。
posted by B&M at 18:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0292『読書と私―書下しエッセイ集』

★★★3
読書と私―書下しエッセイ集 (1980年)
井上 靖

読書に関する、1980年近辺のエッセイ。
井上靖、井伏鱒二、遠藤周作、大江健三郎、城山三郎、田辺聖子、丸谷才一、吉行淳之介、今は老齢重ねた、あるいは亡き、著名人たちの読書を垣間見れて参考になる。

作家はアマチュアの読み手である。(…)かれらは大人で、こちらは子供だ。まずそのことを心にきざんで、その上で、しかしこちらは多様な分野にわたって読みうる、自由な読み手なのだと自分を励まして、その尊敬すべき研究者の友人たちと、本についての会話を、つまりはなにについてよりも永つづきする、楽しみにあふれた会話をかわすのである。(p71-72 大江健三郎「作家の読書」)

大江健三郎氏がトンボの赤青、2色の色鉛筆で線を引いていることも記されている。

ところで、本に関する話は、「読み」の優劣という考え方を用いると、途端に苦になる。
どんな読み方も上下なく面白いひとつの視点としてとらえられる広い心を持った者同士なら楽しいだろう。
教師としてはそのような寛容さを持ちたい。
・・・ところで、この頃はみんな忙しくて、メディアも多様で、本など積極的に読む人にゆめゆめ巡りあえないのだが、生徒の中に熱心な本読みがいたりすると嬉しくなったりする。
あと、ネット上で精力的に活動していらっしゃる読書家さんたちにエールを送りたくなる。
posted by B&M at 17:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする