2008年02月17日

0284『ホライズン・ブルー』

★★★★★5
ホライズンブルー
ホライズンブルー
近藤 ようこ

虐待騒ぎみたいなことを書いたが、この作品は母と娘の憎悪の連鎖を丹念に追っている。
必読です。
すばらしい描写力。ことば。語りも秀逸だった。なんでそんなにすごいんだろう。

けれどわたしには違和感があった
胎内にいた時にはあれほど一体感があったのに
生まれてしまうとやはり子どもは別の人間なのだ(p144)

ある母親が言った。「わたしはあの子のことがよくわからないんです。」
作中にも同じようなセリフが出てくる。
母親が子どもを愛するのが「ふつう」という常識を、疑いはじめる。

今のブームも、それを私に教えてくれない。癒しなんていう言葉が流行しているが、この言葉が出てくると、とたんにすべてが曖昧にぼやかされてしまう。そりゃ「癒し」は論理でなくて気分なんだろう。だけど、いいのか、それで。(あとがき)

もうともかく、読んでみて下さいとしか。話はそのあと。
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0283『17歳。』

★1
17歳。 1 (1) (アクションコミックス)
藤井 誠二

原作の藤井さんという人は、『教師失格』なんかを書いていて、注目している。
無軌道な少年たちと、欲望と、法律と、社会と、無関心と、といった大きなテーマ。
ただ、漫画としての価値は低いと思う。
女子高生監禁殺人というのも、ちょっとズレている。

巻末にインタビューが載っているのだが、あの手この手で自分たちを正当化しようとしているというか、肯定しようとしているような気がして鼻につく。
そもそも誰に「言い訳」しているのか。
事件に関する報道からの2次被害を受けるであろう被害者の遺族か。
「そんなこと書いたらかわいそうだ」と思っている傍観者市民たちか。
出版業界バッシングの人々か。
なぜこれをここに載せなければ作品が成立しないのか。

社会的な問題を描くことには価値があると思う。
しかし同時に話題性があり、商業的に過ぎる場合もある。
社会的な貢献か、それとも商業的な成功のためか。
そのあたりがはかり切れず、少しいらいらする。

もちろん風化させてはならない。
我々は「うまく」問題を社会化させて考えておかなければならないのだろうが、それが難しい。

ところで評論家、学者の言うことは現場と違って「机上の空論」で無感情であることがしばしばある。
こういう人たちはそれはそれで客観性という存在価値がある。
「現場の人」はそういう人たちをバカにしすぎてはいけない、と、ふと思った。

この作品が問いかけているもの自体は大きいが、作品自体がよろしくない。
最後の街への収斂も、どこか違う。

何も変わらない──
何も伝わらない──
この街は──(4巻)


全4巻。
17歳。 2 (2) (アクションコミックス)
17歳。 3 (3) (アクションコミックス)
17歳。 4 (4) (アクションコミックス)
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0282『やさしさの精神病理』

★★★★4
やさしさの精神病理 (岩波新書)
やさしさの精神病理 (岩波新書)
大平 健

「やさしさってなんだろう」というのが、高校時代から大学卒業して少しくらいまでの大きな問題だった。
僕はやさしくありたい、と思ったが、やさしさというのはそう単純なものでもなかった。
やさしさについて考えるための契機に。

「強いひとよりやさしいひとに(RADWIMPS『オーダーメイド』)」

今月号の文藝春秋。インタビューで芥川賞受賞の川上未映子さんがこんなことを言っていた。
「純文学が扱うような深い人間関係を照らす文章は、傷つくからアクセスできないんだそうです。傷つくことが本当に怖いんですね。(08'3月特別号p350)」

 傷がつくのを恐れること。それはモノやカラダにとどまらずココロにも及びました。「傷ついた!」「傷つく!」という言葉に、わざわざ「心が」とつけるまでもないほどに、人々はココロが傷つくことに敏感になっていったのです。(p167)

傷つきやすく、傷つくことがわかっていると、傷つけるのが怖くなり、限りなくやさしくなる。
僕に関していえば、別にそこまで傷つきやすかったわけでもなかったと思う……。
そこに、日本的な伝統や、八方美人でありたいとか、人のためになりたいとか、そういうのが混ざっていたんだろうな、と、今になって思う。
まだまだ解決されていない問題は多いのだけれど。
posted by B&M at 10:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0281『知性の磨きかた』

★★★★4
知性の磨きかた (PHP新書)
知性の磨きかた (PHP新書)
林 望

"リンボウ"先生の知性の磨きかた講座。
大学時代に読んでおいて、よかった。
けっこう刺激的な謂なので、いくつかぱらぱらと引用しておく。
引用なので割愛しているが、林氏は人柄もよさそうで、「あえて刺激的な言い方をすると」などと、引用外でちゃんと断っていることをここで断っておく。

しかし、実のところは、読書と人格とはほぼ無関係であります。(…)古今の殺人鬼のなかには、ずいぶん高い教養をもった、大学教授級の頭脳をもった大変な読書家という人が決して珍しくはありませんん。(p101)

人間が生きていく上では、読書よりもセックス(…)セクシュアルな本を読むことが悪い読書だなどと決めつけるのはまったく傲慢の沙汰(p107)

形式的に「古今の名著」なんかを読破したりするとね(…)学問がそのような形で鼻先にぶら下がったら、これは文字通り鼻持ちならない(p111)
posted by B&M at 10:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0280『短編集』

★★★★4
短編集
短編集
魚喃 キリコ

魚喃キリコさんは、感情の、恋愛の、その瞬間を切り取って描くのがうまい。

ブラウン管の中で動かないあたしを

ハギオはズタズタにひきずり回してすんなり勝ってしまった

最初から負けているあたしに
ハギオはそんなにも勝ちたいんだろうか

誰のことも好きじゃないハギオは
そんなにもあたしのことを嫌いなんだろうか(「痛々しいラヴW」)

ハギオというのは、25peso読書ノート: 0113『南瓜とマヨネーズ』でも登場する。
posted by B&M at 10:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0279『ランゲルハンス島の午後』

★★★3
ランゲルハンス島の午後 (新潮文庫)
安西 水丸,村上 春樹

春樹さんの文章と、水丸さんのイラスト。
その後の黄金コンビのお仕事。

 下着のTシャツというのもかなり好きである。おろしたてのコットンの匂いのする白いTシャツを頭からかぶるときのあの気持ちもやはり【小確幸】のひとつである。(p83)

僕は春樹さんの小説も好きだが、何より春樹さんのライフスタイルみたいなものに最も魅かれたタイプかな、と思ったりもする。
春樹さんのように書き、生きること。
そういうライフスタイルの流布というか、モードの確立というか、そういうことをやっていた頃のエッセイ。
posted by B&M at 09:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0278『「ニッポン」に自信がもてる本―これが世界に威張れる日本と日本人の才能だ!』

★★2
「ニッポン」に自信がもてる本―これが世界に威張れる日本と日本人の才能だ!

ニホンに自信が持てなくなったら。
ナショナリズムに偏るのも偏屈だが。

アメリカでファンが急増 日本の"AKITA DOG"(p89)

へえー、と思うようなことがたくさん書いてあり、これはこれで面白い雑学。
要は、いいところも「悪いところも」、中庸をとりつつ認める、知っておく、時には自信をもつ、がいいんではないでしょうか。
posted by B&M at 09:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0277『‘THE SCRAP’―懐かしの1980年代』

★★★★4
‘THE SCRAP’―懐かしの1980年代
村上 春樹

春樹氏がある雑誌に連載していたもの。
外国記事から面白そうな記事を選び、スクラップとして翻訳したものたち。

 もちろん何もかもが古びているというわけではない。あるものは束の間のフェイク(まやかし)であるとしても、あるものは確かな予兆である。そういう意味ではこのスクラップ・ブックは文字どおりのごった煮なわけで、ページをぱらぱらとめくりながら「そうそうこんなことも」とか「へえ、こんなことが」とかいった風に気楽に<近過去トリップ>を楽しんでいただけると、僕としては嬉しい。(まえがき)

こんなスクラップ本、そうそうない。
春樹氏の血肉となっているのだろうなあ、と邪推しながら読むのもまた楽し。
posted by B&M at 09:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0276『コーヒーブレイクの英語』

★1
コーヒーブレイクの英語
岡田 誠一

2ページから4ページくらいずつの英語雑学集。
見出しと内容が噛みあっていない。
というか、本文はもういろんな方向に拡散する感じでとらえどころがなく、読みにくい。
テーマとか、そういうのなしに、ともかく英語の雑学を広げたい!という人向け。
コアな英語ユーザー向け、というとこだろうか。

授業で雑談をするときに注意しているのは、授業本編から筋が通っているか、とか、生徒の日常にマッチするか、とか、道徳を含んでいるか、というようなことなのだが、そういうのとは真逆にある構成。
知の楽しみといえばそうなんだろうけど、僕は頭が悪いためか読んでいていらいらするので、コーヒーブレイクにもならなかった。
雑学として知っておいて損はない知識が並んでいると思うが、果たして頭に残っているのかしらん。

 have butterflies in one's stomach(=胃の中にチョウがいる)といういい回しは、日本語では考えられない表現だ。何かを行う前の「不安でどきどきする」気持ちを表している。(p27「カエルがのどに飛び込んだ──a flea in one's ear「苦言」「いやみ」」)
posted by B&M at 09:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0275『センリツ』

★★2
センリツ (ワニマガジンコミックス)
麻生 我等

エロ本です。
なぜ18禁になっていないのか不思議。
女子禁制、あるいは自己責任で。

麻生さんは絵がうまいです。
江川達也さんなんかの影響が大きいかな、と思いました。
ご本人は下手だ下手だと言われておられますが。
「エロって・・・ほんとにむずかしいッスね・・・(あとがき)」
この頃は精霊の守り人でキャラクターデザインをされているようです。(このアニメの監督は神山氏といって、『攻殻機動隊』を作っていたそうな?(fromインタビュー映像))パイロット版とかインタビューで見事にスルー(取り上げられていない)されておりますが(^^;;

エロって一大市場で、目を逸らしてばかりだと大事な事を見落とします。
作画の訓練の場でもあるし、メディアフォーマット普及の一手でもあるでしょう。
玉置勉強氏とかね。メジャーに昇格された方も少なからずおられます。
ただ、AV出たら女優になれるかというとそうでないように、やっぱり裏手稼業なところはあるでしょうね。
未成年には教育上よろしくないでしょうし。

「すまない久保くん・・・すべてわれわれの責任だ」
「もっと厳しくあの男を監視しておくべきだった」

昨今の高校吹奏楽部の事件を彷彿とさせるような、音楽教師の話(表題)でサンドイッチ構成になっている点でスキャンダラスな点があります。

他に、妄想管理人 (ヤングコミックコミックス)
こちらはめぞん一刻みたいな。まあ、よくあるシチュエーションエロですかね。
posted by B&M at 09:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする