2007年09月01日

0066『ありがとう、さようなら』

★★★★★5
ありがとう、さようなら (ダ・ヴィンチ ブックス) [単行本(ソフトカバー)] / 瀬尾 まいこ (著); メディアファクトリー (刊)
ありがとう、さようなら (ダ・ヴィンチブックス)
瀬尾まいこ

0010『見えない誰かと』に続く著者の2冊目のエッセイ集である。
雑誌『ダ・ヴィンチ』2003年9月号から2007年4月号まで連載されていたものに、若干の加筆・訂正、いくつかの書き下ろしが加わっている。
雑誌の方ではAyumi Shimodaという人のほのぼのイラストも楽しめた。
僕は『ダ・ヴィンチ』を購読していないのでときどき目にしたくらいだけど。

やはり同じ職業として、一人の先輩として、大事な人だ。
その一編一編を読むごとに、早く学校に行きたいという気持ちがいっぱいになる。
そして、早くそんな担任がしてみたい、そんな生徒と出会いたい、と思う。

また、教師兼小説家としての先輩としても大事な人だ。
この仕事をしながらも書けるということで、僕を計り知れず勇気づけてくれた。
陸上部の男の子が「ファンです」とたずねてきたということだが、そしてご自身あとがきにも書かれているが、教師というただでさえ風当たりの厳しい職業に、小説家というオプションを携えて。
どれほどのプレッシャーだろうかと思う。

それでもひょうひょうと生きていらっしゃるのだろうか、なんて思わせてくれるから、このエッセイはすごい。

本を通じて、僕も瀬尾先生の生徒のひとりになれました。

「おみゃあが出してる学級通信と区別つかんわや」
『ダ・ヴィンチ』2007年9月号にこの本の広告が載っていた。
そこには読者のあたたかい感想が書かれてある。
ふたつほど引用したい。

「私はのんきでめんどくさがりやで、勉強嫌いの陸上バカですが、やっぱり先生目指して私なりに努力して見ようと思いました。(15歳 女性)」

「私も中学校の講師をやっていることもあり、瀬尾さんの作品に出てくる中学生の言動が手に取るようにわかります。作品に勇気づけられて、やっぱり教師って面白くて、素晴らしい仕事だと実感しました。(27歳 男性)」

文庫版が出ています。
ありがとう、さようなら (MF文庫ダ・ヴィンチ) [文庫] / 瀬尾 まいこ (著); 志村貴子 (イラスト); メディアファクトリー (刊)
posted by B&M at 20:38 | Comment(0) | TrackBack(2) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

0065『考える技術・書く技術』

★★★★★5
考える技術・書く技術 (講談社現代新書 327) [新書] / 板坂 元 (著); 講談社 (刊)
考える技術・書く技術
板坂 元

結局3連続で行った「僕が大学時代に読んだ、自分の知的活動において重要な本」シリーズの最後の一冊。
参考:
0063『「知」のソフトウェア』
0064『知的生産の技術』

1973年刊のこの本は、今から30年以上前にあって現在の良質なHacksを集めたような楽しい読み物である。
ただのテクニックの羅列ではない、読む楽しみが共存している。
それでいて、頭のウォームアップから型の話、ブレーン・ストーミング読書、そして最終的に発想から組立までの「書く技術」へ。
内容はこれでもかというほど充実している。

著者自身のテクニックに対する疑問、不安のようなブレも見られ、そういう謙虚さや慎重さは体得するべきであろう。

 現在は妥協して、カードを山ほどつくっているけれども、カード・システムに避けがたくつきまとう非人間的な要素を、なんとかして弱くしようと努力している。
この本も講談社現代新書なので、以前の表紙の写真を付け加えておく。
Image

0064『知的生産の技術』

★★★★4
知的生産の技術 (岩波新書) [新書] / 梅棹 忠夫 (著); 岩波書店 (刊)
知的生産の技術

梅棹 忠夫

0063『「知」のソフトウェア』で触れたが、大学時代に読んだ、僕にとって重要な「知」の手引書のひとつ。

1969年が第1刷の本書は、多少時代遅れな点があってもその根本的な部分は変わらない。
過去を愉しみながら、歴史を感じながら楽しむのがいいだろう。

著者は「学校は知識の獲得のしかたは教えない」と言うけれど、いまや時代は逆転していはしないか。
塾や学校でいかに点数をとるかのテクニックを教える。
やり方ばかりを愛でて、本質に触れない。
あるいはそのように「やり方」がしっかりと流通したことに対しては、この本の功績は大なのかもしれない。

学校で教えるべきは「勉強の仕方」だけではない。
知に対するあこがれや姿勢、情熱なども教える。
だからこそインターネットでは勉強は成立しない。

著者が自身の興味を満たすために編み出した方法を追いながら、「仕方」と、それを利用し探求する「知」のコンテンツの両方を楽しむ。
いささか前者の「仕方」のほうに重きが置かれているが、それゆえ、普遍的な知の探求書としてはわかりやすいしよい。

 これはむしろ、精神衛生の問題なのだ。つまり、人間を人間らしい状態につねにおいておくために、何が必要かということである。かんたんにいうと、人間から、いかにして《いらつき》をへらすか、というような問題なのだ。整理や事務のシステムをととのえるのは、「時間」がほしいからでなく、生活の「秩序としずけさ」がほしいからである。(p95、《》内引用元では傍点)